化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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水素を吸蔵する金属について

例えば水素を燃料とする燃料電池自動車など、廃棄物は水のみであるため水素は環境にやさしい物質として注目され、利用が促進されています。

水素を利用するにあたっていくつか課題がありますが、その中の1つが水素の運搬の問題です。水素を液体として運搬するには-253℃以下の低温で保持する必要あります。また、液体水素が気化して漏れると爆発の危険性もあります。また液体水素の密度は0.0708 g cm-3であるため、5 kgでも約70 Lになります。

この運搬の方法の1つとして水素を金属に吸蔵させる方法が提案されています。

水素を吸蔵する金属

水素を吸蔵する金属はいくつか知られています。

例えば、Pb単体や水素吸蔵合金(La-Ni系合金、Mg-Ni系合金(ニッケル-水素電池の電極材料)Ti-Fe系合金)が知られています。

Pb単体は最大で自身の体積の約935倍の水素ガスを吸蔵します。

La-Ni系やTi-Fe系水素吸蔵合金は室温に比較的近い温度で水素ガスを吸収します。水素を吸蔵した固体を加熱して高温にすると水素ガスを放出します。LaNi5は1.3質量%の水素を吸蔵します。

水素ガスの吸収、放出はほぼ可逆的で繰り返し使用できるため、水素の貯蔵材としての利用が期待されています。しかし、水素ガスの吸収、放出を繰り返すと徐々に劣化(水素脆化)して貯蔵率が低下する点、原料が希少資源で高価である点、再生が容易ではない点などの問題点が残されています。

また、金属元素と水素との相互作用や結合の有無についても、完全には解明されていません。

水素吸蔵の研究について

水素を吸蔵する金属、特に水素を吸蔵する合金については1960年代から研究が行われています。最初に実用的な水素吸蔵合金として開発されたものはMg-Ni系合金です。