化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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メイラード反応、カラメル化、食品が茶色くなる褐変現象の話

日本化学会の会員に毎月送られているであろう"化学と工業"という冊子。読まずに部屋に隅に積んでいる人も多いのではないでしょうか。今回はその冊子の中から、Overview "褐変現象で注目される食品から生体まで"についての紹介です。

 褐変現象とは?

パンや,カステラの焼き色,味噌や醤油,コーヒーの色など多くの食品は調理や加工,貯蔵時に褐色に着色することが多い。あるいは皮をむいた野菜や果物が茶色くなることもある。このように茶色くなる現象を「褐変」と呼んでいる。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

りんごを切った後は、塩水や砂糖水につけるというのは常識なのではないでしょうか。これは放っておくと切り口が茶色に変わってしまうから、それを防ぐためということはよく知られている話だと思います。 他にも例えばべっこう飴を作るときは、砂糖水を焼くと、最終的に茶色くなりますね。この茶色のことをここでは褐色と呼び、そのため褐色に変わる現象のことを褐変現象と呼ぶのだと思います。

食品の褐変現象は,酵素によるものとそれ以外のものに分類されている。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

 りんごが茶色くなる褐変現象はまさに、この酵素によるものです。りんごは植物組織中のポリフェノール化合物が酵素によって酸化することで、褐色に変わる、つまり褐変現象が起きるそうです。

酵素が関与しない褐変現象の要因はいくつか知られているが,代表的なのがメイラード反応とカラメル化である。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

カラメル化とは?

カラメルはプリンの茶色いソースのことをカラメルソースと呼ぶので馴染みがありますよね。カラメル化についての説明は次の通りです。

カラメル化は糖類を100°C~200°Cに加熱すると褐色になる現象だ。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

wikipediaでべっこう飴を調べると、まさに140°C~180°Cで加熱して作るそうなので、これはまさにカラメル化の代表例といえると思います。他にはカルメ焼きもカラメル化を利用している例でしょう。カラメル化はさらに、甘い香りがしたり、ほろ苦さが生じることも利点の一つでしょう。

メイラード反応とは?

メイラード反応とは食品に含まれるタンパク質やアミノ酸と糖が反応し褐色物質メラノイジンを生じるもの。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

 もう一方の褐色反応であるメイラード反応はタンパク質やアミノ酸と糖が反応するところに違いがありますね。ただし、メイラード反応とカラメル化反応をきっぱり分けて考えるよりは、料理で食品を加熱したときは、カラメル化反応とメイラード反応の両方が同時に起こっていると考えるほうが自然なようです。

 メイラード反応は1912年にフランスの科学者Louis Camille Maillardによって発見されたそうです。メイラードさんが発見したので、メイラード反応と呼ぶわけですね。他の言い方としては、"糖化"や"アミノカルボニル反応"もあるそうです。糖化はタンパク質に糖が縮合するためそう呼ばれています。アミノカルボニル反応は、タンパク質やアミノ酸などのアミノ基をもつ化合物と、還元糖などのカルボニル基をもつ化合物が反応するためにそう呼ばれています。

メイラード反応の経路は非常に複雑で,発見から100年以上もたつが,いまだ解明されていない点が多い。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

上の引用文の内容を示す例として、2002年のスウェーデンの報告があります。それは、炭水化物を多く含む食品を高温で加熱したときに、合成樹脂の原料であるアクリルアミドが生成することが発見されました。これは、食品中のアスパラギンとフルクトースやグルコースなどの還元糖が調理中に加熱された際にメイラード反応が起こったためであると考えられているそうです。実際にフライドポテトやポテトチップスからも検出されたそうなので、驚きです。

パンやカステラの焼き色ばかりでなく,味噌や醤油の色,焼けた時の香ばしい香りもメイラード反応による。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

つまり、褐変現象はメイラード反応が知られて100年以上経っていますし、褐変現象自体は人類が昔から知っていた、そして利用してきた現象であり、また非常に身近の現象でもありますね。それにも関わらず、未だに解明されていないことが多いらしいので、化学は奥が深いですね。大学の研究でもこういったことを突き詰めていけば、新たな発見があると思いますが、この身近さゆえに、大学に限らず高校生による科学部や化学部等での研究活動でも、新たな発見が報告されたりするのではないかなと思ってしまいます。

Overviewの全文が読みたい人は"化学と工業"の5月号をご覧ください。たぶん、大学の図書館には置いてあるのではないでしょうか。また、化学系の大学院生なら持っている人もいると思います。別に日本化学会の回し者ではないですし、宣伝したところで1円もメリット無いんですけどね。